なぜ英語を学ぶのか〜 WHY→ HOW→WHAT の法則で日本の英語教育を変える 〜

53, 17.5, 3.9

これらの数字が何を示しているかお分かりでしょうか?

 

 

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これらは全て英語に関する数字です。

英語は53の国と地域で話されており、

17.5億人が英語を話し、そのうちの3.9億人が母国語として英語を話します。

世界人口がだいたい70億人と言われているため、

英語を話せれば約4人に1人の人間とコミュニケーションが取れるようになるわけです。

 

 

 目次

 

 

 

個別指導塾での実験

 

個別指導塾で英語講師として活躍していた頃、生徒達にこんな質問をしたことがあります。

 

 

「英語を勉強するのって大切だと思う?」

 

 

 

YES or NO Question です。

何%の生徒がこの質問に、「YES」と答えたと思いますか?

 

 

 

 

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100% です。

 

日本全国の学生を対象にしたわけではないので、

正確な数字を出すことはできませんが、

少なくとも僕が担当した生徒達に関しては

英語は極めて重要なスキルである

という認識がありました。

 

 

世間でも英語の重要性は広がっていますが、

学生も同様に英語の重要性に気づいている

のは間違いない証拠ですね。

 

続けざまにもう1つ質問をしました。

  

 

 

「何でそう思うの?」

 

 

 

おの質問に対する答えは予想どうり多種多様でした。

 

「外国人と友達になれるから」「洋楽の歌詞を英語で理解したいから」

「英語で映画を見たいから」「テストに出るから仕方なく」

 

 

主な返答は以上の通りですが、男の子の中には

 

「英語話せたらかっこいいじゃないですか?」

 

と答えてくれた生徒もいました。

皆がユニークで違った理由を持っていることがわかり、

とても楽しい時間だったのを覚えています。

しかしこれは僕が担当した生徒に限ったことではありません。

 

英語を学習している全ての人間が

それぞれ違った理由を持ち、違ったニーズを満たすために

英語を学習しています。

 

英語を教える上で

 

生徒が英語を学習する理由を知ること

 

とても大切なことだと僕は考えています。

 

個別指導塾で英語を教えていたため、

英語の成績向上は僕の生徒全員に当てはまる理由ではあったと思います。

しかし成績向上以外にも皆が違った価値観を英語学習に対して抱いていたことが分かったため、

 

1人1人に合わせた英語に関する話題を考え、モチベーションの向上

 

に努めていました。

 

「洋楽が好きな生徒には洋楽の話題」「洋画が好きな生徒には洋画の話題」

 

といった感じにですね。

 

生徒に得意科目は何?と質問したこともあります。

 

そうすると、6~7割の生徒が「英語」と答えてくれました。

非常にに嬉しかったことを覚えています。

しかし、客観的に日本人の英語力を見てみると、

 

日本人の英語力はアジアの中でも低い位置に属しています。

 

せっかく学校で習った英語が、世界では通用しないのです。

 

 

カナダでの実験

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 ナイアガラの滝

 

 

EF English Proficiency Index ( EF EPI )

という教育機関をご存知でしょうか。

 

世界中から様々な年代の英語学習者がインターネットを通してリーディングとリスニングのテストを受けます。

最新のものだと、世界80カ国から約100万人の受験者が集まりました。

 

EF EPIの面白い点は、英語力を統一テストで計り、ランキング化するシステムを導入している点です。

 

日本は何位くらいに属していると思いますか?

 

80カ国中37位です。

 

英語の流暢さでいうと、世界基準でだいた平均くらいですね。

しかしこの結果を初めてみたとき、不思議に思いました。

 

なぜかと言うと、

 

日本よりも、EF EPIが出したランキングの低い国出身の人の方が、英語を流暢に話せる確率が高い事を日常生活の中で直に感じていたからです。

 

カナダの首都、オタワで語学学校に通っていた時期があるのですが、

その語学学校には世界中の国々から英語を学ぶためにカナダまできた学生がたくさんいました。

もちろん日本人の学生も数人いたのですが、その為か、

 

日本人の学生が話す英語と、他国出身の学生の発音や、流暢度を容易に比較すること

 

ができました。

あくまで「学生」を対象にしていたのですが、

僕はこの実験が大好きで仕方がありませんでした。

 

なぜかと言うと、

 

「日本人にあって、他国の方にないもの」

「他国の方にあって、日本人にないもの」

 

が浮き彫りになるからです。

 

 

ある日、日本人とメキシコ人それとサウジアラビア人の会話をちょこっと盗み聞きしていたことがあります。

その3人は僕の友人だったのですが、

廊下で普通の会話をしていました。

そのときとても面白い発見をしたのですが、

 

メキシコ人とサウジアラビア人の学生の方が、日本人よりも英語を「流暢」に話すのです。

 

これはその場に限ったことではありません。

 

僕の経験上、

 

日本人よりもメキシコ人とサウジアラビア人の方が英語を流暢に話します。

 

ちなみにメキシコは44位サウジアラビア72位です。

 

日本の方が、EF EPIのテストで良い結果を収めているにもかかわらず、

なぜ彼らの方が「流暢」に英語を話せるのでしょうか。

 

参考/ EF EPI

www.efset.org

 

 

日本人が英語を学ぶ理由とは

 

日本の英語教育と、英語教育に成功していると言われている国の英語教育で

決定的に異なるポイントがあります。

それは、

 

日本の英語教育は正確度「Accuracy」を重視しているのに対し、

彼らは英語を流暢に話す能力「Fluency」に焦点を当てて英語を学んでいる点です。

 

フィンランドの外国語教育は非常にいい例を示しています。

センター試験のような統一テストがほとんどなく,

生徒にできる限りの自由を与える教育方針を採用して教育改革を行なったことで有名なフィンランドですが、

EF EPIのデータによると、

英語を第一言語として話さない国の中での英語力は

2017年の段階で80カ国中、6位となっています。

彼らの「母国語」はフィンランド語ですが、

日常の中で英語を使うことが当たり前だそうです。

 

 

THE KOREAN TIMES 

フィンランドの外国語教育の現場が垣間見れる記事が乗っていたので紹介したいと思います。

 

Teachers only spoke English. If you had questions, you had to ask them in English. In the beginning level, especially, you learn to speak without knowing much grammar. 

( 先生が授業中に使うのは英語のみで、生徒は英語で質問をしなければならない。特にビギナーレベルでは、文法をあまり知らない状態でもとにかく英語を話すことを学ぶ。)

 

 

One interesting point is that there are even now, no native speaker in a classroom. All English teachers are Finnish, and they speak English the whole time, except when they have to explain grammar. 

( 興味深い点として、英語を母国語で話す先生が英語を教えている訳ではない点が挙げられる。全ての英語講師はフィンランド人で、文法を説明するとき以外を除くと、授業全体を通して全て英語が用いられる。)

 

 

日本の英語教育とと全く違った路線をたどっています。

 

ここで言いたいのは「Accuraccy」が悪いということではありません。

本当にここで言いたいのは、

 

なぜ日本の英語教育がここまで「Accuraccy」にこだわる理由が分からない

ということです。

 

今の英語教育の現場を見てみてください。

99:1の割合で「Accuraccy」が重視されているといっても過言ではありません。

 

中学生の段階で、英語でディスカッションする機会を学生に与えている学校が日本にどれほどあるでしょうか?

 

「Fluency」が重視されない理由として、英語はテストのためであるという認識や、英語講師の質など、挙げればきりがないですが、

 

「世界中に友達を作る」「洋楽や洋画を英語で理解する」

「世界中を旅行したい」「ビジネスの幅を広げたい」

 

といった生徒のニーズを満たしてあげるためには

 

「Accuraccy」のみにフォーカスした、テストのための英語教育を終わらせる必要があります。

 

 

補足ですが、

2017年にEF EPIのテストで一位に輝いた国はどこだと思いますか?

 

オランダです。

 

ちなみにオランダでは

アメリカやイギリスのテレビ番組を翻訳せずに英語のまま放送しているようです。

彼らも英語を言葉として認識していることがわかりますね。

 

m.koreatimes.co.kr

 

 

 

バイリンガルであることのメリット

 

バイリンガル(二か国語を流暢に操れる人)が当たり前の時代である現代において、

モノリンガル(1つの言語しか話さない人)は少数派です。

リソースによって異なりますが、

モノリンガルの割合が約40%に対し、

世界人口の約43%がバイリンガルです。

60~70%がバイリンガルであるというデータもあります。

ちなみにトリリンガル(3ヶ国語を流暢に操れる人)は約13%でした。2016年のデータです。 

 

ilanguages.org

 

 

BBCというニュースチャンネル

 

”The Amazing Benefits Of Being Bilingual”

 

という記事を2016年に掲載しました。

バイリンガルの利点について書かれています。

 

かなりざっくり説明すると、

 

  1. バイリンガルは2つの言語を話せるがゆえに混乱してしまうため、知的能力に劣ると考えられていた。
  2. 最近の研究によると、バイリンガルは集中力が高く、問題解決能力に優れ、、精神年齢が高いことがわかった。

 

といった内容になります。

 

www.bbc.com

 

The New York Times 

 

" Why Bilinguals Are Smarter "

 

と題して、バイリンガルの利点について書かれた記事を2012年に掲載しています。

 

 

www.nytimes.com

 

内容は上のBBCの記事とほぼ同じです。

 

このようにバイリンガルであることのメリットは

 

科学的に証明されています。

 

 

 

それでもなお

 

上で挙げたBBCThe New York Timesを始め、

多くの研究者、教育機関、科学者がバイリンガルのメリットを説いています。

特に英語に関しては「国際語」であるのと同時に、

個人の価値を高めるという意味でも、

とてもメリットの大きい言語です。

 

日本人がバイリンガルになるとすれば、

日本語ー英語の組み合わせが一番多いですよね。

 

ところが子供達の前でこのような動機付けを行なったところで、

生徒のモチベーションが激変するわけではありません。

 

 

英語は話せて当たり前と捉えられている世の中で、

科学的にもそのメリットが証明されているにもかかわらずです。

 

 

なぜでしょう?

 

 

どう学ぶのか < なぜ学ぶのか

 

日本の英語教育は遅れているという評判が後を絶えません。

しかし本当の問題は教育メソッドだけでなく、

もっと根本的なところにあると思っています。

 

英語がそこまで得意でなかった中学3年生がいました。

後々、彼女はある日をさかいに猛烈な勢いで英語を勉強し始めることとなり、

高校受験間際には高校生用の長文問題集が解けるレベルまで英語力が向上しました。

 

その生徒の担当講師になった僕は、最初の授業で英語を教える前に、

なぜ英語の授業を受講してくてたのかを聞いてみました。

すると、

 

将来看護師になりたくて、医学の道に進むために〇〇大学に行きたいんですけど、その大学だとカナダに短期留学して海外の医療を学べるんですよ!外国にも友達をいっぱい作りたいし、高校、大学受験でも結局英語使うので、受けてみました。

 

 

以上の言葉通りではなかったのですが、だいたいこのような感じでした。

その生徒の担当講師だった僕は、最初の授業で英語を教えたのではなく、

 

彼女の置かれている状況や将来の夢などを最初に聞き出し、

なぜ彼女にとって英語が大切なのかを教えました。

 

  1. 医学の道に進みたい/  世界中で出版、掲載されている文献の半分以上が英語で書かれており、英語が読めれば医学に関するフレッシュな情報を幅広く、素早く手に入れることができる。
  2. 留学する予定がる/  英語で円滑なコミュニケーションをとる必要があるため、4技能をバランスよく伸ばす必要がある。
  3. 外国の友達を作りたい/  スピーキング、リスニング能力を伸ばす必要がある。
  4. 高校、大学受験/  英語を正確に読み、聞き、書く必要がある。

 といった具合にです。

 

彼女のニーズを満たすため、

英語がある程度のレベルまで伸びたところで、時にはスピーキングを意識した授業も行っていました。

 

 

教育制度を変えたところで結果は同じ

 

小学校の授業に英語が本格的に導入され、

英語検定や大学入試の改革も着々と進められる中で、

英語教育にようやく改善がもたらされると期待する声もあがっていますが、

教育メソッドのみに焦点を当てていては、本末転倒だと思います。

 

なぜなら

 

教育メソッドを変えたところで、

それが生徒の英語を勉強する強い動機にはならないからです。

 

最高の教材を使い、最高の教え方を実戦したところで、

 

生徒の英語学習に対する動機をくすぶってあげない限り、生徒の英語力は向上しません。

 

 

動機付け適切な教育メソッド

 

 

この順番で教育を実践していくことで、英語のみならず、

教育全体にいい影響を与えることができると考えています。

 

 

WHY→ HOW →WHATの法則 

  

START WITH WHY という本があります。

 

Simon Sinek によって書かれたビジネス書なのですが、

この本で彼はこのようなことを述べています。

 

Know WHY, know HOW, then WHAT.

(何をどのようにするのかを考える前に、なぜそれをするのかを考えなさい。)

 

 

この言葉は英語教育だけでなく、

 

日本の教育全体に欠けている要素を最も簡潔に表している言葉

 だと思っています。

 

  • WHY/  なぜ英語を学ぶのか
  • HOW/   どのように英語を学ぶのか
  • WHAT/  英語を学ぶ

 

現代の英語教育では

 

「WHY」→「 HOW」→ 「WHAT」であるはずが、

「WHAT」→「 HOW」 →「 WHY」

の順番になってしまており、

 

「WHY」が無視され「HOW」の部分しか注目されていない 最悪の状況にあります。

 

難しいところは、

生徒1人1人が異なる「WHY」を持っている

ことです。

 

生徒1人1人の「WHY」をきちんと理解し、

なぜその生徒にとって英語が重要なのかを示すことができてから、教育制度を考えても遅くはないと思います。

 

日本の英語教育に携わる全ての人間が、

目の前の生徒1人1人の「英語を学ぶ理由」を把握する、

もしくは「英語を学ぶ理由」を考える時間を与える必要があります。

 

ただがむしゃらに「英語は大切だ」と生徒にうったえたところで、

生徒は動いてくれません。

 

まずは生徒の「WHY」を見つけて、生徒の目的に合った教育をするべきではないでしょうか。

 

Start With Why: How Great Leaders Inspire Everyone To Take Action

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今回は英語を学ぶ動機について触れたので、次回からは英語の教育メソッドについて書いて行きたいと思います。